それぞれのX’mas and New Year
フォーシーズンズホテルのスウィートで、コース料理のルームサービス。
あとはゲストの美女を待つばかりだ。
ルパン三世は満足げに手元の写真を眺めていた。
これからここにやってくる美女……峰不二子が持ってきたルパン一味新年最初の獲物の写真だ。
写真を見ながら、ルパンはくっくっと笑う。
なんとも我々の新年にふさわしいゴキゲンな獲物じゃないか。
窓の外はクリスマスイブのイルミネーション。
間もなく次元と五右ェ門もロンドンに到着する。
クリスマスイブの夜も、あの無骨な男達には関係あるまい。
部屋の扉がノックされた。
ルパンはネクタイの位置を確認しすました顔をつくると、待ちかねた美女を迎えるため、ゴージャスな部屋を気取って歩くのだった。
1. 次元大介のクリスマスイブ
2. 石川五右ェ門のクリスマスイブ
〜カレイドスコープ〜
3. 銭形警部のクリスマスイブ
〜わがまま〜
新年の一日目。
ルパン三世は助手席に峰不二子を乗せて、ブガッティのヴェイロンを走らせていた。
彼らはトラファルガー広場での公開の場からまんまと強奪する事に、見事成功したのだった。
二億円近くする世界最高速といわれるスーパーカーに、これまた数億円分の宝石をちりばめた特注のアサンティのホイール。
ルパン一味の新年のパレードには最高のオモチャじゃないか。
しかし次元と五右ェ門に計画の途中で気づかれないかハラハラしたが、ヴェイロンは当然ながら、実は2シーターだ。
援護のヘリで上空を舞っている次元、そしてこの先逃走用のトレーラーを用意している五右ェ門の不機嫌そうな表情が思い浮かべて、ルパンは苦笑いをする。
しかし助手席の不二子は当然満足げだ。
そして彼も最高に満足している。
宝石をちりばめたホイールをはいたスーパーカーが、普通にすんなりと似合う女なんて彼女以外この世界にいるまい。
発進するというより発射するという言葉がぴったりのこの車の素晴らしい加速、そして時速100キロ、200キロを超えても安定してさらなる加速を見せるトルク。それは俺達の生き方にぴったりだ。
逃走劇を繰り広げながらもルパンはうっとりとヴェイロンを走らせた。
しかし、今回の銭形警部の追跡と警備はおそろしく手ごわい。
かなり郊外まで来ているというのに、奴の包囲網は的確にルパンを発見・追跡してくる。
いつも以上のしつこさと熱心さ、一体新年早々なぜにこう発奮してるのかね?
そして、いつも獲物そのものにはたいして興味を示さない五右ェ門が「分け前としてホイールをそのまま一本よこせ」と要求してきたり、次元にいたっては「そのままサーキットに持って行って、俺に思い切り走らせろ」と妙な事を言い出したりだ。
神経質にハンドルを握りながらも、もういちどルパンは不二子を見た。
どうやら俺達の優雅なドライブはそんなに長くは楽しめないらしい。
そんな彼の気持ちを知ってか知らずか、不二子は世界最高速の車の助手席でルパンを見て、優雅に微笑んだ。彼らの足元で光っているホイールよりも輝かしい笑顔で。
fin