遅めのランチタイムに間に合ってパスタにがっつく俺を、女は面白そうに見ていた。

 そして思いついたように、店員を呼び止める。

「デザートをいただける?」

 ジェラードを追加した。

 俺がエスプレッソを飲んでいる間、旨そうにジェラードをたいらげる。

 

「旨そうだなァ。俺も頼めばよかった」

「あら、じゃあ今から頼めば?」

「一皿は多い。味見だけでいいんだよ。」

 

 俺はニッと笑って、エスプレッソのカップを置いた。

 テーブルにひじをつく女の手を取って、顔を寄せる。

 彼女は一瞬からだを引くが、逃げない。

 俺はゆっくり、そのやわらかそうな唇に俺のそれを重ねた。

 

 そう。

 この女が、今まで一度も経験したことのないキスをしてやる。

 

 想像以上に柔らかな唇。

そうっと舌を入れて彼女のものにからめてゆく。

洋ナシの甘い味。

ゆっくりと甘く濃く、彼女の唇と舌を愛撫した。

 長く濃厚な口付けの後、女は息をつく。

 

 古いたとえだが、鉄の女サッチャーだって落とす自信はあるぜ。このキスでなら。

 

 女は甘い息をついた後、俺を見た。

 まっすぐな、深い瞳。

 柄にもなく、俺の胸はどきどきする。

 

 お互い、しばらくだまってそのまま。

 そして女はくっくっと笑う。

 

「ほんと、おかしなひと。土曜のこんな昼間…。

私はまだ30キロ近く走らなければならないのよ。そんな女に、こんなキスをしてどういうつもり?」

 

 俺は彼女の赤い髪に触れた。

 

「デザート、味見だけのつもりだったんだが、一皿食いたくなってきた」

 

 もう一度その唇を塞ぐ。俺の脳は軽く絶頂を迎えた。

 ルパン三世がひとつだけ、予言をしよう。

 多分今から彼女を遠くに連れてゆくのはオレンジ色のデ・ローザではなく、赤いジャケットを脱いだ、この、俺様。