● ボーイフレンド  ●

 私の初めてのキスの記憶は、柳蓮二のあの開いているのか開いていないのかわからない鋭い目とともに思い返される。

 なんて言うとまるでその相手が柳くんみたいだけど、違うんだよね。
 じゃあ思わせぶりなことを言うなって?
 でも、本当のことなんだから仕方がない。
 私が初めて男の子とキスをしたのは去年の冬。2号館と北門の垣根の隙間で、早川先輩と。あ、早川先輩っていうのはその時私がつきあっていた彼でね、天文部の先輩。私が入学した時の3年生で、ちょーかっこいいの。つきあい出したのは、先輩が卒業して高等部に進学してからなんだけど。
 憧れの先輩とつきあって、そして初めてのキスなんてドラマティックな瞬間のことを、私は何から何まで覚えている。
 部活を終えて海林館を出た私と、高等部での活動を終えた先輩はいつも北門までの近道で待ち合わせて一緒に帰っていた。その時は12月の初旬で、クリスマスの予定と冬の天体観測の話なんかをしながら歩いてたっけ。すぐ傍のテニスコートでの、小気味いい硬式ボールが跳ねる音が校舎の壁に響いてた。
 校舎の裏で立ち止まる先輩。
 それまで何度かそんな雰囲気にもなったこともあったから、私もいよいよかなっていう気持ちでいると、やっぱり先輩は私の指先をぎゅっと握り締めてきて、そしてその顔が私に近づいた。
 熱い唇の感触と、外気でひんやりとした先輩の眼鏡の感触。
 いつもクールで整った顔の先輩が、ぎゅっと眉間にしわをよせて目を閉じている。一瞬唇が離れて、熱い吐息を漏らしたかと思うと、もう一度その唇はやってきて、今度は唇よりもっと熱い舌が私の中に入ってきた。先輩はぎゅっと目を閉じたまま。
 ということを私がきっちり覚えているってことは、つまり私は目を開けていたっていうことなんだけど。
 そして、先輩の舌が入ってくることにどう対応したものかと思っている時、先輩の肩越しに見えたのが、彼だった。

 柳蓮二。
 
 別に不思議なことじゃない。
 彼はテニス部で、テニスコートは2号館のすぐ傍だ。
 垣根の脇を通りながら、柳くんは一瞬足をとめて私と目が合った。
 いつもほっそりとさせているその目が、すこし見開いたような気がしたけど、気のせいかもしれない。
 すぐに彼は何事もなかったように通り過ぎて行った。
 どうかした? と、身体を離した先輩に不思議そうに尋ねられて、私は、ううんなんでもないって答えた。
 私はなんとなく、さっき柳くんが通ったことを先輩には秘密にしておこうと、とっさに考えた。
 どうしてかはわからないけど。
 そして、どうしてかわからないことがもうひとつ。
 ちょーかっこよくて憧れてた先輩と、身体を寄せてキスをしたっていうのに、こんな感じなものなのかな? ってこと。
 つまりね、もっと舞い上がって夢中になっちゃってドキドキしてっていう感じかなって思ってたんだけど、意外に私は冷静で、『ヤダ、こんなに顔近づいて私、鼻に脂ういてないかな。先輩の眼鏡についちゃう』とか、『先輩でもこういう時ってちょっとヘン顔になるんだ』とか考えちゃうわけ。かつ、唇や舌の感触っていうのがヘンな感じで、なんていうの気持ちワルイってわけじゃないけど、うーん別にこういうのしなくてもいいかなって思った。先輩のキスが下手ってわけじゃないと思う。でも、なんかこうしっくりこなくて、『こういう時どうしたらいいのかなー』って考えちゃって、そんな時に柳くんと目が合ったんだ。
 
 だから、そのキスのことを思い出すと、同時に柳くんの顔が頭に浮かぶ。
 


 さて、どうしてこんな話を思い出したかというと、3年生になって柳くんと同じクラスになったから。で、二回目の席替えで隣になったのである。
 こうやって彼の名を気軽に出すけど、私は彼とはほとんど話したことはない。
 でも、柳くんは有名人だからどんな人かなんとなくは知ってる。
 頭が良くて、テニスが強くて、冷静な子だ。
 隣の席でノートを開く彼の大きな手のきれいな指を見ていると、その動きが止まった。
「どうかしたのか、
 彼が私の名を呼ぶのでびっくりして顔を上げた。
 しっとりときれいな肌に整った鼻筋、あいかわらずうっすらとしか開かないその目をじっと見る。
 いやいや、きれいな男の子だね。
「あ、ううんなんでもない。柳くんが隣だと、宿題でわかんなかったとことか聞けそうだから心強いなあって思って」
 私が言うと、彼はフと口元を緩めて笑った。ま、こういうこと言われ慣れてるだろうな。優等生だから。
 


 あの時のキスを柳くんに見られたことを、私は実はそんなには気にしてない。
 そりゃまあ、ハズカシーなとは思うけど、彼はそういうこと言いふらしたりするタイプじゃないし、あんまり興味なさそうだもん。
 それに先輩の身体の影になった私を誰だか認識できていたかもわからない。
 え? 早川先輩とはどうしたかって?
 あれから身体に触れ合うようなことが多くなっていって、距離は縮まっているはずなのに、私の『しっくりこない』感がずっと続いたままで、結局それ以上のことはしなかった。そうなるとぎこちなくなって、進級に伴って自然消滅。
 あれだけ憧れてたのに、おかしなもの。
 私が、何もかも初めてで心得てなくてノリが悪いからかな?
 恋ってああいうもの?
 よくわからないまま先輩と疎遠になっていくことも、不思議とそれほど悲しくもなくて、私って恋向きじゃないのかななんて思って過ごしている梅雨のこのごろ。




 その日の柳くんの声の調子は、さしていつもと変わらないけれど『そろそろ来るな』と私は身構えた。
 席替えをして、2週間くらい経ってからのこと。
「うん?」
「俺は、お前が宿題をやってきてわからなかったところを尋ねられたら、それを教えることはやぶさかではない。が、まったく自分でやってこないというのは、いただけないな」
 来た来た。
 私は柳くんに借りた数学のノートを開いたまま、ちょこんと頭を下げる。
「……うーん、さすがにそうだよね。でも、なかなか数学って苦手で手が付かなくてねー」
は天文部だろう。数学が苦手だなどと言っていてはいけないのではないか」
 わ、柳くん、私が天文部だってことも知ってるのか。さすがデータマン。
「まーね、そうなんだけどね」
 なんとか必要事項を写し終えたノートを、彼に返却する。
「はい、どうもありがと。柳くんて、ほんとすごいね、どの科目もすっごい出来が良くて、優等生の鏡って感じ」
 数学に関するネタからなんとか話題をそらさねば、と私は必死。
「頭も良くて優しくてかっこいいからモテるでしょ」
 我ながらなんとひねりのない物の言い。
 でも、柳くんて実際そうだもんね、頭良くて優しくてかっこいい。
 私のそんな言葉に、また彼はいつものようにフと笑った。ああ、彼の場合、一般的な『笑う』って感じじゃなくて、本当に目元と口元をお愛想程度に緩めるていう風なんだけど、彼の雰囲気からしたらそれで十分笑顔。
「俺がか? さあな」
 そしていかにも彼らしい無難な答え。
 柳くんはかっこいいし男らしいけど、クールで感情的じゃないから、不思議と『男の子』っていう風に身構える気にならなくて、例えて言うなら『年上の家庭教師の先生』みたいな印象だ。
 しっかりと距離を保っているけれど、他人に拒絶的ではなくて、なんだかんだ話しやすい。
「またまた〜。彼女とかいるんでしょ?」
 私が調子に乗っても、彼はまったく調子を崩さない。
「そういった相手は特にはいない」
 これまた興味ないという風に、さらり。
「へ〜え」
 どうだかね、なんていう余計な一言は飲み込んで。



「ねえねえ、。どうなの?」
 昼に学食で、二年の時から同じクラスだった友達が唐突な一言。
「え? 何がよ?」
 当然わけのわからない私は、食券と日替わり定食を引き換えてトレイを手にする。
「だから、柳くん」
「はあ?」
 テーブルについて、まず水を一口。
 なんなんだ。
「席替えして隣になったじゃん。で、結構いい雰囲気じゃんねえ」
 彼女は思い切り前のめり。
「別にフツーにしゃべってるだけだよ」
「そお? でも、いいんじゃない、柳くん」
 えらく柳くんを押してくる彼女に、私は苦笑い。
 早川先輩は私と別れた後、すぐに高等部で新しい彼女ができた。私が早川先輩と別れた経緯なんて別に誰にも話していないから、私の友達はきっと私が早川先輩にふられてしまって気落ちしているって思っているんだ。だから、励ますみたいな気持ちでこういうこと言うんだろうな。
 だからって、わざわざ私と早川先輩のこと詳しく話すのもヘンだし、そもそも何て言ったらいいのかもわかんないから、苦笑いしたままの私。
 友達の話題は、すぐに柳くんの話題から、テレビ番組のお笑いへと変わっていった。
 ふと私は大きく息をついた。
 恋って、実のところどんな感じなんだろう。
 早川先輩とのキスを思い出す。
 好きな人とああいうことをすると、きっともっと身体が熱くなって、頭に血が上って、周りが見えなくなるものだと思ってた。
 あれだけ好きだった先輩とのキスでもあんな具合だから、私って恋ダメ女なのかな。
 あの時の柳くんの目。
 まるで私のそんな感覚を見通したみたいだった。
 もちろん彼は通りがかっただけで、あんなの見ちゃって運が悪いってだけだと思うし、そんなことは単に私の思い込みなんだけどね……。

 熱い恋がしたいな。
 でも、私には無理かな。
 だから、しばらくそういうのはいいかな。

 そんな、ぼんやりした、今の季節にぴったりな私の気持ち。



 さて、このじめじめした季節でも、隣の席の柳くんはいつも涼しげでさわやかだった。
「ねえ柳くん、ほら数学の課題、私なりにもやってきたんだけどやっぱりわかんなかったんだわ。だから、ちょっとノート見せてくれないかなあ」
 形ばかりやってみた宿題のノートをちらつかせて、なんとか彼のノートを借りようと試みる。
 彼は私が開いてみせたノートを一瞥。
「……ここまでやったなら、あとは公式にあてはめて計算するだけだろう?」
 私のノートを机に置き、テキストを広げた。
 ちょっとちょっと、私は答えを写させてくれたらそれでいいんだけどな。
 そんな私の思惑はお構いなしに、彼は淡々と説明を始めた。
 慌てて言われたとおりに計算などしてみる私。
 あれ?
 不思議。
 柳くんに教えてもらうと、目からウロコ的に苦手な数学もちょっとはわかるなっていうのもそうだけど、柳くんはこうやって近くにいて話しても、男の子だなって妙な意識をしなくてすむ。かっこいい子だけど、妙に緊張することがない。
 行儀のいい猫みたいだ。
 突然、冬の天体観測を思い出した。
 1年の頃、早川先輩を好きになり始めた頃に天体観測に出たとき。
 しんとした夜空を皆で見上げながら、先輩が一生懸命星の位置を教えてくれたっけ。凛と冷たい夜のぴりっとした空の下なのに、先輩のことが気になって落ち着かなかったことを覚えてる。
 柳くんと星空を見上げたらどんな感じだろう、なんてスットンキョウなことを突如考えた。
 夜の空の下に行けば、きっと彼はその静かな空気と闇にすっかり溶け込んでいて、私は星の観測に集中するだろう。だけど、ふと隣を見ると、彼は確実にちゃんとそこにいて、一緒にいるひとを安心させるんだろうな。
 どうしてそんなことが思い浮かんだのか、わからない。
、聞いているのか?」
 ぼーっと彼の顔を見ていた私に、柳くんは怒った風でもなく言う。
「あ、ごめんごめん、聞いてたよ。いやー、柳くんと天体観測行ったらどんな風かなーって考えちゃってた」
 さすがに彼は一瞬目を見開いて、かるくため息をつく。
 そりゃそうだ、フツーこういうこと口に出さないよね、考えてもさ。柳くんだから、この程度のリアクションで済んでるわけで。
 私は苦笑いでごまかしつつ、数式の検算をした。
「では、俺と行ってみるか?」
 彼の言葉に、私は目を丸くして顔を上げた。
「ええっ?」
 一瞬見えた彼の涼しげな眼はまた閉じられて、私に計算の続きを促す。
 相変わらず、行儀のいいクールな猫だ。
 彼の言葉の意図がわからぬまま、でもまあ深く考えることもないかと、私は数学の課題に集中した。
 そんな気なんかなかったのに、結構わかってきちゃったじゃない、数学。



 6月も終わりごろになると、毎日ほんとうに蒸し暑くて学校から帰る時間の太陽もだんだんと余力が増してくる。部室で後輩たちとバカ話なんかをしてたら結構遅くなっちゃって、あわてて校門を出た。
 北門を出たところで、すいっと私を追い越してそして立ち止まったのは、今や見慣れた姿、柳蓮二だった。
「あ、テニス部も練習終わったんだ、おつかれ!」
 テニス部ってもっと遅くまでやってるみたいな印象だったけど、下校時刻はちゃんと守るのね。そういえば、テニス部の真田くんと柳生くんて有名な風紀委員だもんなー。
 そんなことを思いながら歩いてると、いつのまにか柳くんが私と並んで歩く。
「天文部は、マックノート彗星を見ないのか?」
 彼は静かにそんなことを言う。
「へえ、さすが柳くん、なんでもよく知ってるねー。うん、確かに見ごろなんだけど、時間外の課外活動だと顧問の先生が同伴しないといけないじゃん。先生の都合悪いから、このところはちょっと部の観測会ができないんだ」
「今日あたりだと、日没後くらいに見えるんじゃないか?」
 さらりと言う彼を、私は驚いて見上げた。
「ほんと何でも知ってるねえ。今時期って、マックノート彗星がだいぶ明るくなってて、運が良かったら日没後30分くらいしたら見えるかもって先生が言ってた」
「一緒に見てみるか。いつか言っていただろう」
 びっくりして私が足を止めても彼はそのまま歩くものだから、私も慌てて後を追った。

 一度家に寄って双眼鏡を取りに行った時に、母親には『天文部の子とちょっと星を見てくるから』と言った。ウチはこれでOK。今回、天文部の子っていうのは正確じゃないけど、柳くんだったら安心だし一人で出かけるよりはいいだろう。
「出現する位置は低いんだろう? 場所選びが難しいんじゃないのか」
「その点はぬかりないよ、これでも天文部よ〜」
 北西の低い空が見渡せるポイントに彼を案内した。
 家からもそんなに遠くない、小高い丘にある公園の山側の石段に腰を下ろす。
 建物や光に邪魔されずにわりといい感じで北西の空を眺めることのできる場所だ。こういう場所、先輩たちから代々言い伝えられるわけです、天文部としては。
 双眼鏡を出して、私はまず目印になるふたご座を探した。
 太陽の力の影響力がなくなった今、カストルとポルックスがぼんやり姿を見せる。
「ヨシ、ふたご座見えた!」
 私が双眼鏡で空を見てる間、隣で柳くんがどんな顔をしてるのか知らない。
 一応、彗星が確認できたら双眼鏡を貸してあげようと思ってるけど、まあほったらかしになるよね、こういう場合。
 でもなんだか、柳くんだったらまあいいか、って思う。
 やっぱり思ったとおりだったな、柳くんとの天体観測。
 一人だと暗くなってからこんなところにいるの心細いけど、柳くんがいてくれてよかったと思う。けど、穏やかなニャンコがそばにいてくれるみたいな感じで、妙に気を使うことがない。不思議だな、こういうの。
「あっ!」
 ふたご座のすこし北側に、ぼんやりとした淡い光の束が見えた。
「見えたか?」
 私はあわてて双眼鏡を柳くんに差し出した。
「うん、見えた! ほら、この位置でね、」
 私が差し出した双眼鏡を、彼は手にするとそれをそうっと地面に置いて、フッと笑う。
がちゃんと彗星を見ることができたなら、それでいい」
 双眼鏡を置いた後に柳くんの手が、私の左耳に触れる。
 そのまま、流れるように彼は私に顔を近づけ、私の下唇を軽く噛んだ。
 痛くはない。
 どうして、だとかそういう当座の疑問もない。
 自分が目を開けているのか閉じているのかもわからない。
 けど、私の目に映るのはさっき見ていたはずの淡い彗星の残像だけで、ということは私は今、目を閉じているんだなあと思った。
 私の背中は、いつのまにか柳くんの大きな手でしっかり支えられていて、ということはつまり私は自分の力でちゃんと座ってることもできなくて、私の両手はどうやら柳くんにぎゅっとつかまってるみたい。
 自分が息をしているのかどうかもよくわからなかった。
 私の耳元で、ふうっと軽く息を吐く音が聞こえて、ああ私も息をしなきゃって思った。
 吐息の後には、いつもの聞きなれたフッという彼の緩い笑顔とともに漏れる声。
「俺がキスをしてが目を閉じれば、おそらくは俺を好きだろう。そう思っていたが、どうだ?」
 その言葉で、私はようやく我に返る。
 身体を離して、自分で座りなおした。
「な、何っ!? 私が目を閉じればって……!」
 とっさに言って、そしてはっとした。
 早川先輩とキスをしながらずっと目を開けていて、そして柳くんと目が合ったこと。
 柳くん、今まで一度もあの話になんか触れたこともなかったくせに……!
 私が言葉につまっていると、彼はその指で私の頬をなぞった。
「いや、別に何も言わなくてもいい。実感できれば、それで十分だ」
 涼しげな声はやわらかな笑みを含んでいて、もう一度唇が私のそれを包んだ。
 何をひとりで勝手に進めてるの、と思うけど、彼が言った『実感』なんていう言葉が頭の中で繰り返される。
 もー、ほんとわかんない。
 わかんないけど、どうして柳くんとこうやってると、ほっとしてそして夢中になっちゃうの。
 熱い実感がある。
 なんだか、ずっとこうしてたいなあっていう実感がある。
 柳くんの指も熱い。
 その指は、私の隣に置いた双眼鏡を手にした。
「……さて、遅くならぬうちに帰らねばな」
 手渡された双眼鏡をケースに入れて鞄にしまうと、先に立ち上がった柳くんが当然のように私の手を取る。
 お行儀のいい、きれいな猫。
 そういえば、猫は肉食獣だったっけ。
「……ひとこと言ってもいい?」
「ああ?」
 柳くんは意外そうにそう声を漏らして立ち止まった。
 だって、何も言わなくていい、なんて言われるとかえってシャク。
「抱いて」
 私がそう言うと、彼にしては珍しく、長らく言葉が返ってこなかった。
 思わず私がしてやったりと笑い出すと、彼もつられてクククと笑う。
「そうだな、強く実感できそうだ」
 そう言いながらも、私たちはお行儀よく家へ帰る。
 私たちが何を実感するのか、それはこれから先のお楽しみ。

(了)
2010.7.5
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